グッドバイ ~嘘からはじまる人生喜劇

監督  成島 出
出演  大泉 洋 小池 栄子
鑑賞日 2月15日
劇場  シネマ・ロサ
評価  ★★★★

<チラシ>

グッドバイ.jpg

ケラリーノ・サンドロヴィッチは、僕の好きな舞台作家のひとりであり、彼の作品を映画として観るのはおそらく今回が初めてなのだけれど、期待に違わぬ面白さだった。
原作は太宰治の絶筆『グッドバイ』。
映画のストーリーもほぼ原作通りに展開していくのだが、ケラリーノ・サンドロヴィッチらしい独自の演出が、それぞれのキャストを生き生きと描き出していたと思う。

まず主人公の田島周二に大泉洋。
見てくれは完全な三枚目なのだが人間味に溢れており、雑誌編集長が正業だが闇商売の稼ぎで愛人を10人近く囲っているという設定。
しかしある時、愛人たちと別れて疎開先の妻子とまじめにやり直すことを決意した彼が、得意先の文士の口車に乗せられるまま、女房替わりの絶世の美女を連れ、一人ずつ愛人に『グッドバイ』を告げていくという話だ。
そしてこの美女こと永井キヌ子を演じるのが小池栄子。
戦争直後のモダンな美女というイメージに彼女が合うのかという点は意見が分かれるかもしれないが、美しさだけでなく、大食漢で怪力という点も含めて、この役を演じきれるコメディエンヌは確かに彼女以外にはいないと思った。
実際、KERA・MAPの舞台版でも彼女が永井キヌ子を演じている。

一人目の花屋の愛人(原作は床屋)とはうまく別れることに成功(?)する。
そして、二人目の愛人は、雑誌に寄稿する挿絵画家の水原ケイ子(橋本愛)で、彼女にはシベリア帰りの乱暴者の兄(皆川猿時)がおり、別れ話で彼の逆鱗に触れることを恐れる田島は、キヌ子を盾にしてケイ子の家を訪ねていく・・・。
太宰の原作はここで終わってしまう。

したがって、ここから先はケラリーノ・サンドロヴィッチの世界ということになる。
“愛人たちと別れて妻子とまじめに暮らそうと奮闘した挙句、最後には肝心の妻子の方に「グッドバイ」されてしまう”というのが太宰が描こうとしていた物語の顛末なのだが、そのコンセプトは活かしつつも、そこからさらに二重三重のドタバタ劇が展開され、最後の最後まで楽しく観ることが出来た。

僕自身、太宰治についてとりわけ詳しいわけでもなく、すべての作品を読破しているわけでもない。
しかし、破滅型の私小説家であった彼がこのようなエンディングを書くとは想像できない。
むしろ愛人たちと別れ、自分の妻にも三行半を突き付けられ、絶望して自殺、という結末が僕の考える太宰治のエンディングだ。
だから、太宰には申し訳ないが、僕はこの小説が未完で終わり、ケラリーノ・サンドロヴィッチの手によって別の作品として生まれ変わることが出来て良かったと思う。
KERA・MAPの『グッドバイ』もまた再演してほしい。

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